旅行や通院、帰省など、愛犬と一緒に車で移動するシーンは意外と多いもの。
しかし「うちの子、車に乗るとぐったりしてしまう」「吐いてしまって心配…」といった“車酔い”の悩みを抱える飼い主さんも少なくありません。
本記事では、犬の車酔いの原因や初期症状、予防法、慣れさせ方まで、安心してドライブを楽しむための具体的な対策をご紹介します。

うぅ…また車なの?ぼく、ぐるぐるして気持ち悪くなるんだよ〜…

ごめんね。でも今日は病院に行く日なんだ。できるだけ酔わないように工夫するから、ちょっとだけ頑張ってくれる?

うーん…でもクルマって、なんか怖いしムズムズするんだもん…

大丈夫。ちゃんと準備すれば、楽しいお出かけもできるようになるよ。少しずつ練習して、車に慣れていこうね。

ほんとに…?じゃあ、ぼくもがんばってみる!
1.犬が車酔いする理由とは?

三半規管の未発達/不安・ストレスとの関係
犬が車酔いをする主な原因のひとつに「三半規管の未発達」があります。特に子犬は成長の途中で、バランス感覚をつかさどる三半規管がまだ完全に発達していません。人間の子どもが乗り物酔いしやすいのと同じで、体の内部で感じる揺れや加速と、目から入る視覚情報とのズレに混乱しやすいのです。
また、車に乗ること自体が「非日常的な出来事」として強い不安やストレスを与えてしまうこともあります。普段と違う環境に連れ出されること、動く密室に閉じ込められるような感覚、エンジン音や道路の振動など、犬にとっては五感を刺激するストレス要因が満載です。これらの不安が自律神経を乱し、吐き気などの車酔い症状を引き起こすことも珍しくありません。
年齢・犬種によっても起こりやすさが異なる
車酔いしやすいかどうかは、年齢や犬種にも左右されます。前述のように子犬は車に慣れておらず、三半規管も未熟なため特に酔いやすい傾向にありますが、成犬でも体質や性格によって車酔いする犬は少なくありません。
また、小型犬や短頭種(パグ、フレンチブルドッグなど)は特に酔いやすいといわれています。体の小ささによって揺れをより強く感じるためですし、呼吸器系が弱い犬種では車内の空気循環が悪いとストレスにつながることもあります。
一方、シニア犬も注意が必要です。加齢による感覚の低下や体調の変化によって、若いころは平気だったのに高齢になってから酔いやすくなるケースもあるため、年齢に合わせた対策が必要です。
2.車酔いの初期症状を見逃さない

よだれ、あくび、震え、吐き気のサイン
車酔いは、いきなり嘔吐に至るわけではなく、いくつかのサインを示しながら進行します。中でもわかりやすいのが「よだれ」です。普段と比べてよだれが多くなっている場合は、吐き気を感じている可能性が高く、車酔いの初期症状と考えてよいでしょう。
他にも「あくびが頻繁になる」「体が小刻みに震える」「後部座席や床にうずくまる」「視線を合わせずにそわそわと落ち着きがない」なども、酔い始めているサインです。軽度の段階であれば、車を止めて少し外に出してリラックスさせたり、窓を開けて換気することで落ち着くこともあります。
事前に把握しておくべき「車に弱い犬の特徴」
車酔いをしやすい犬にはいくつかの共通点があります。たとえば「極端に神経質」「初めての環境に過敏」「音や振動に敏感」といった特徴がある犬は、車内の環境変化に対して強く反応しやすく、結果的に車酔いを引き起こすことが多くなります。
また、過去に車に乗って体調が悪くなった経験がある犬は、「車=嫌な体験」とインプットされてしまい、それがストレスとなって酔いやすくなってしまうことも。犬の性格や過去の経験を踏まえ、「うちの子は車に弱いかも?」と気づいておくことが、早めの対策につながります。
3.車酔い対策の基本とおすすめ方法

食事のタイミングや車内の換気
車に乗る前の「食事のタイミング」はとても重要です。直前にごはんを与えると、車の揺れによって消化が不完全なまま胃が刺激され、吐いてしまう可能性が高くなります。理想は出発の3〜4時間前に軽めの食事を済ませておくこと。空腹すぎるのも逆に胃酸が上がって気持ち悪くなることがあるため、バランスが大切です。
また、車内の空気環境にも注意を払いましょう。換気が不十分で空気がこもっていると、匂いや熱がストレスになりやすく、酔いの原因になります。可能であれば窓を少し開けて外の空気を取り入れたり、エアコンで温度を快適に保つようにしてください。
ドライブ前のトレーニングと慣れさせ方
車酔いの最大の予防策は「慣れ」です。初めから長距離ドライブをするのではなく、まずはエンジンをかけた車に乗せて短時間だけアイドリング状態で過ごさせたり、家の駐車場で車内だけに滞在させることからスタートしましょう。
慣れてきたら、5分ほどの短距離ドライブ→10分→20分と、少しずつ時間を延ばしていきます。この時、ドライブ後は必ず「楽しい思い出」で終えるのが大切です。公園で遊んだり、おやつをあげたり、「車に乗るといいことがある」と犬が思えるようなポジティブな体験を積み重ねていきましょう。
🍽 食事のタイミングや車内の換気
出発の3〜4時間前の食事が理想
乗車直前のごはんはNG。車の揺れで消化不良になり、吐いてしまうことがあります。軽めの食事を数時間前に済ませておきましょう。
空腹すぎも逆効果
空っぽの胃に胃酸が溜まり、気分が悪くなることも。愛犬の体調や体質を見ながらバランスを取るのがポイントです。
こまめな換気で快適空間に
匂いや空気のこもりはストレスの元。少しだけ窓を開けたり、エアコンを上手に使って、心地よい空間を保ちましょう。
🚗 ドライブ前のトレーニングと慣れさせ方
- ① 動かない車で慣らす:最初はエンジンをかけず、車内で数分過ごす練習から始めましょう。
- ② エンジンON → アイドリング慣れ:次にエンジン音や振動に少しずつ慣れていきます。
- ③ 5分間のプチドライブ:短距離からスタート。成功体験を積み重ねましょう。
- ④ 少しずつ距離を延ばす:10分→15分→30分…と段階的に距離を伸ばすのがコツです。
- ⑤ ごほうびで「楽しい記憶」に:ドライブの後はおやつやお散歩など、愛犬が喜ぶごほうびを忘れずに!
4.獣医師監修の薬・サプリメントも検討しよう

動物病院で処方される酔い止め
どうしても車酔いが改善されない場合は、動物病院で相談して「獣医師が処方する酔い止め」を使うのもひとつの方法です。よく使用される薬には「セレニア」などの制吐剤があり、安全性が高く、旅行や長距離移動の際に活用されることが多くあります。
処方薬はその犬の体格や健康状態に応じて最適なものを選んでもらえるため、市販品より安心して使うことができます。ただし、常用には向かない場合もあるため、必要な時に限って使用するなど、医師と相談しながら使うようにしましょう。
市販サプリの成分と使用の注意点
最近では、ドラッグストアやネットショップで「犬用酔い止めサプリメント」も販売されています。多くはショウガエキスやペパーミント、L-トリプトファンなどの自然由来の成分で、不安や吐き気の軽減を目的としたものです。
ただし、犬の体質によっては合わないこともあるため、初めて使う際には少量から試すようにし、体調の変化に注意しましょう。また、成分表をよく読み、人間用のサプリを安易に代用しないよう注意してください。
5.車酔い克服に向けた「楽しいお出かけ」習慣づくり

短時間の移動からステップアップ
車に対する苦手意識をなくすためには、無理なく「楽しい」と感じてもらうことが大切です。最初は5分ほどの近所ドライブから始めて、公園や河川敷など犬が喜ぶ場所へ連れていき、ポジティブな体験で終わらせましょう。
こうした小さな成功体験を何度も積み重ねることで、「車に乗るのって案外悪くないかも」と犬の中の印象が変わっていきます。焦らず、ゆっくりとステップアップしていくのがコツです。
安心感を与えるための飼い主の行動
ドライブ中の飼い主の態度も、犬に大きな影響を与えます。出発前や移動中に飼い主が焦っていたり不安そうにしていると、その空気を敏感に察知して犬も不安になってしまいます。
リラックスした声かけや、優しく撫でるといったスキンシップを通じて、「大丈夫だよ」と安心させてあげることが大切です。また、移動中はなるべく犬を車内で固定(クレートやハーネス)し、揺れを最小限に抑える工夫も必要です。
6.まとめ:愛犬のペースで少しずつ「車好き」に!

犬の車酔いは、決して珍しいものではなく、多くの飼い主が経験する悩みのひとつです。しかし、そのほとんどは適切な準備とトレーニング、そして飼い主のサポートによって克服できるものです。
愛犬の体質や性格をよく理解し、少しずつ慣れさせながら、楽しいお出かけ習慣を築いていきましょう。無理をせず、愛犬のペースに合わせた対応を心がけることで、いずれは「車に乗るのが大好き!」と思ってくれる日がやってくるはずです。
コメント