子犬を迎えたら、健康と安全を守るために欠かせないのがワクチン接種です。しかし「いつから?何回?どの種類を打てばいい?」と迷う飼い主は少なくありません。ワクチンは、命に関わる感染症を未然に防ぐ唯一の予防策であり、接種時期や種類を正しく理解してスケジュール管理することが重要です。

ワクチンって全部ちゃんと打たないとダメかな?

うん!病気になったら遊びにも行けなくなっちゃうよ?
本記事では、月齢別のワクチンスケジュール、5種・6種・8種混合ワクチンの違い、狂犬病ワクチンの義務と重要性まで詳しく解説。さらに接種前後の注意点や副反応対策、費用の目安、よくある質問Q&Aも網羅。
この記事を参考に、愛犬の一生を通じた健康管理の第一歩を踏み出しましょう。
1. ワクチンの役割と必要性を知ろう

感染症を防ぐ大切な予防策
子犬にとってワクチンは、命を守るための重要な予防医療です。犬は生まれてから母犬の初乳を飲むことで「移行抗体」という免疫を受け取りますが、この抗体は時間とともに減少していきます。免疫が弱まる時期に感染症にかかると、命に関わる重い症状を引き起こす危険性があります。
特にパルボウイルス感染症やジステンパーなどは、発症すると致死率が高く、治療が非常に困難です。こうした危険な感染症を未然に防ぐために、ワクチン接種で免疫をつけておくことが必要です。
ワクチン接種は個体の健康だけでなく、他の犬や人間への感染拡大を防ぐ「集団免疫」の役割も担っています。ドッグランや散歩で他の犬と触れ合う予定がある場合は、なおさら計画的な接種が欠かせません。
ワクチンを打たないとどうなる?
ワクチンを接種しないまま子犬を外に連れ出したり、他の犬と接触させたりすると、命に関わる感染症にかかるリスクが急激に高まります。特に子犬の免疫力は成犬に比べて未熟で、わずかな病原体でも深刻な症状を引き起こす可能性があります。
代表的な例が犬パルボウイルス感染症です。このウイルスは非常に生命力が強く、土壌や路面、靴底、衣類などに付着した状態で数カ月から数年も生き延びることがあります。つまり、散歩コースの地面を一度舐めただけ、他の犬が通った場所を歩いただけでも感染の危険があるのです。
さらに、パルボウイルスに限らず、ジステンパーウイルスや犬アデノウイルスなども重篤な症状を引き起こす感染症の代表格です。これらは発症すると急激に症状が悪化し、高熱、下痢、嘔吐、呼吸困難、神経症状などが見られ、特に子犬では致死率が非常に高いとされています。
治療には入院や集中管理が必要になることが多く、治療費は数万円〜数十万円単位になるケースも珍しくありません。さらに、完治しても後遺症が残る場合があり、健康な生活を送ることが難しくなることもあります。
つまり、「ワクチンを打たない」という選択は、愛犬の命を危険にさらす行為と言っても過言ではありません。病気にかかってからではなく、かかる前に予防することこそが、飼い主ができる最も確実で愛情深い守り方なのです。
2. 子犬の月齢別ワクチンスケジュール

生後2ヶ月から始まる基本スケジュール
一般的に、子犬の混合ワクチン接種は生後2か月(8週齢)頃からスタートします。母犬から受け継いだ移行抗体がまだ残っているため、1回目の接種では免疫が十分につかない可能性があります。そのため、複数回の接種が必要です。
基本的なスケジュールは以下の通りです。
- 1回目:生後8週齢(2か月)
- 2回目:1回目から3〜4週間後(生後11〜12週齢)
- 3回目:2回目から3〜4週間後(生後14〜16週齢)
この時期にきちんとスケジュールを守ることで、移行抗体の減少と同時にワクチンによる免疫を確実につけることができます。
3回接種の理由と間隔の目安
3回接種を行う理由は、移行抗体の影響で1〜2回目では十分な免疫がつかない可能性があるためです。最後の接種(3回目)で確実に免疫を獲得し、感染症への耐性を高めます。
接種間隔は必ず3〜4週間あけることが推奨されています。これより短いと免疫反応が不十分になり、長すぎると免疫効果が低下してしまうため、動物病院と相談しながら予定通りに進めることが重要です。
3. ワクチンの種類とその違い

5種・6種・8種混合の違いとは?
混合ワクチンは、複数の感染症を一度に予防できる注射です。代表的な種類と予防できる病気は以下の通りです。
- 5種混合ワクチン
- 犬ジステンパー
- 犬アデノウイルス1型(犬伝染性肝炎)
- 犬アデノウイルス2型(犬伝染性喉頭気管炎)
- 犬パラインフルエンザ
- 犬パルボウイルス感染症
- 6種混合ワクチン
- 上記5種+犬コロナウイルス感染症
- 8種混合ワクチン
- 上記6種+犬レプトスピラ症(2種類)
犬レプトスピラ症は人獣共通感染症(人間にも感染する病気)で、河川や野生動物の尿を介して感染します。自然豊かな地域やアウトドア活動が多い場合は、8種混合を選ぶケースが多いです。
狂犬病ワクチンは義務?任意?
日本では狂犬病予防法により、生後91日以上の犬は年1回の狂犬病予防注射が義務付けられています。これは混合ワクチンとは別で、接種後には市区町村から交付される「鑑札」や「注射済票」が必要になります。
狂犬病は日本では長年発生していませんが、海外では依然として多くの国で発症例があり、輸入犬や密輸などによる侵入リスクがゼロではありません。法律に基づき、必ず接種を行いましょう。
4. 接種の流れと飼い主がすべきこと

接種前の準備と注意点
- 接種当日は体調が良いかチェック
- 下痢や嘔吐、発熱がある場合は延期
- 食事は普段通りでOK(過度な空腹や満腹は避ける)
- 予約制の病院なら、混雑を避けて落ち着いて接種できる時間を選ぶ
動物病院では接種前に体温測定や健康チェックを行い、異常がなければ接種となります。
接種後の過ごし方と副反応のチェック
ワクチン接種後は、少なくとも当日は安静に過ごさせることが基本です。接種直後は体がウイルスや細菌に対する免疫反応を起こしているため、無理をさせると体調を崩す可能性があります。特に、激しい運動や長時間の散歩、他の犬との接触は避け、できるだけ静かな環境で休ませてあげましょう。
一般的な副反応としては、一時的な発熱、軽い食欲不振、元気がなくなる、注射部位の軽い腫れや痛みなどが見られることがあります。これらは多くの場合、24〜48時間程度で自然に回復しますが、念のため様子を観察しましょう。
ただし、まれにアナフィラキシーショックなどの重篤な副反応が起こることがあります。これは急激なアレルギー反応で、呼吸困難、顔や口周りの腫れ、全身の震え、ぐったりして動かないといった症状を伴い、数分〜数十分以内に進行する危険性があります。命に関わるため、少しでも異変を感じたらすぐに動物病院へ連絡してください。
こうした緊急時に迅速に対応できるよう、接種後30分間は病院内または病院近くで待機し、愛犬の様子を確認することが推奨されます。特に初めてのワクチン接種や、新しい種類のワクチンを打った場合は、慎重な観察が重要です。
また、副反応が軽くても発熱や腫れが3日以上続く場合や、接種部位が大きく赤く腫れている場合も獣医師に相談しましょう。早期対応により、重症化を防ぐことができます。
5. よくある質問Q&A

外出はいつから?
子犬が安全に外へ出られるのは、最終ワクチン接種から1〜2週間後が目安です。この期間を経てようやく体内の免疫が安定し、外界に存在するさまざまなウイルスや細菌への抵抗力が整います。特に犬パルボウイルスやジステンパーウイルスなどは感染力が非常に強く、土や道路、ほかの犬の排泄物などを通じて容易に広がります。
そのため、最終接種が終わる前にドッグランや人混みの多い場所に連れて行くことは避け、ベランダや抱っこ散歩など、直接地面に触れない方法で外の環境に慣らす「社会化トレーニング」を行うのがおすすめです。免疫が安定するまでは、外の景色や音、人の動きを見せる程度にとどめ、本格的なお散歩や他犬との接触は必ず時期を守って始めましょう。
費用の目安と保険は使える?
混合ワクチンの費用は、種類(5種・6種・8種など)や地域、動物病院の価格設定によって異なりますが、一般的には1回あたり5,000〜8,000円程度です。さらに、法律で接種が義務づけられている狂犬病ワクチンは3,000〜4,000円ほどが相場です。
年間で考えると、初年度は複数回の接種が必要になるため、1万円〜2万円程度の出費を見込んでおくと安心です。
なお、ペット保険の多くは予防目的の医療行為を補償対象外としていますが、最近では一部の保険会社が「予防医療特約」や「ワクチンプラン」を用意しており、これらを利用すれば接種費用の一部をカバーできるケースがあります。加入中の保険がある場合は、契約内容を確認し、必要に応じて特約の追加やプラン変更を検討しましょう。
また、複数頭飼っている場合や、動物病院によってはまとめて接種することで割引が適用される場合もあります。定期的にかかりつけ医と相談し、安全性を確保しつつ費用負担を抑える方法を検討するとよいでしょう。
6. まとめ:スケジュール管理で子犬の健康を守ろう

子犬のワクチン接種は、命を守るために欠かせない予防策です。月齢やワクチンの種類に応じた正しいスケジュールを守ることで、致死率の高い感染症を含む多くの病気から愛犬を守ることができます。特に免疫が未発達な子犬期は、たった1回の接触や外出が命に関わる感染につながることもあります。
また、接種間隔や選択するワクチンの種類は、飼育環境や生活スタイル、活動範囲によって最適解が異なります。たとえば室内中心の生活なのか、屋外での活動が多いのか、ほかの犬との接触頻度はどれくらいかによって、必要なワクチンや接種回数は変わります。そのため、必ずかかりつけの獣医師と相談し、愛犬に最適な接種プランを立てることが大切です。
さらに、接種忘れを防ぐ管理方法も重要です。ワクチン手帳に記録するのはもちろん、スマホのリマインダーやカレンダー機能を活用すれば、次回接種日をうっかり忘れる心配も減ります。家族で共有できるアプリを使えば、誰でもスケジュールを把握でき、協力して愛犬の健康管理ができます。
ワクチンは一度打てば終わりではなく、毎年の追加接種(ブースター)によって効果を維持することが重要です。接種を習慣として定着させ、長期的な健康維持につなげましょう。愛犬の未来を守るために、「計画的なスケジュール管理」こそが最大の予防策です。
コメント