犬が他の犬に吠えるのはなぜ?原因別の対処法としつけの進め方

「うちの子、他の犬を見ると毎回吠えて困る…」
そんな悩みを抱えている飼い主さんは少なくありません。

お散歩中やドッグラン、動物病院の待合室など、他の犬と出会う機会は意外と多いものです。そのたびに吠えてしまうと、飼い主としては焦ったり気まずい思いをしたりして、散歩の時間自体がストレスになってしまうことも。

しかし、犬が吠えるのには理由があります。その理由をしっかり理解し、適切な対処としつけをすれば、他の犬との穏やかな関係を築くことは決して不可能ではありません

この記事では、犬が他の犬に吠える原因から、改善に向けた具体的なしつけ方法、飼い主が避けるべきNG対応までを、わかりやすく解説します。ぜひ、愛犬との信頼関係を深める第一歩としてお役立てください。

目次

犬が他の犬に吠える理由とは?

恐怖・縄張り意識・興奮などの心理

犬が他の犬に吠える行動は、多くの場合「感情の表現」です。言葉を持たない犬たちは、吠えることで自分の気持ちや意思を伝えています。以下に代表的な心理的理由をまとめました。
感情・心理 具体的な行動理由
恐怖心 「知らない犬=怖い存在」と認識し、警戒する気持ちから吠えます。
縄張り意識 「ここは自分のテリトリー」と感じ、相手を威嚇するために吠えます。
興奮・喜び 「遊びたい!」「近づきたい!」という感情が高ぶって吠えるケース。
ストレス・不安 環境や状況への不安から、気持ちの高ぶりで吠えることがあります。
これらの感情は、単体ではなく複数が混ざり合って吠えにつながることもあります。特にリードにつながれて自由が利かない状況では、「逃げ場がない=吠えて距離をとりたい」という行動が出やすくなります。

幼少期の社会化不足も影響

犬の性格や行動には、「社会化期(生後3週〜12週頃)」の経験が非常に大きく影響します。
この時期は、犬の一生の中でもっとも環境に柔軟に適応しやすい重要な時期であり、心と身体の発達にとって極めて大切な時間です。

社会化期には、他の犬や人間とのふれあいを通じて「これは安全だ」「こうやって接すればいい」と学ぶ機会が必要です。また、人の声やさまざまな生活音(掃除機の音・車の音・インターホンなど)、日常的に出会う物体(ベビーカー、自転車、帽子をかぶった人など)にも少しずつ慣れさせていくことが望ましいとされています。

しかしこの大切な期間に、十分な社会的刺激を受けずに過ごしてしまうと、成長してから「知らないもの=怖いもの」として過剰に反応しやすくなる傾向があります。

たとえば、ペットショップのガラスケースの中で長く過ごしていたり、衛生管理のために他の犬と隔離されていたブリーダーの元にいたりすると、他の犬と遊ぶ経験や、人に抱っこされる体験が極端に少なくなることがあります。
その結果、成犬になったときに他の犬に出会うたびに吠える・怯える・攻撃的になるといった行動につながりやすくなるのです。

また、飼い主が「小さいから怖がるだろう」「感染症が心配だからあまり外に出さないほうがいい」と過保護にしすぎることで、社会化の機会を奪ってしまうケースも少なくありません。

社会化は一度きりのチャンスではなく、成犬になってからも少しずつ経験を積むことで補える部分はありますが、子犬の頃に経験しておくことで、格段にスムーズに他者との関係を築けるようになります。

つまり、犬の吠え癖や他の犬への警戒心は、単なる性格ではなく、過去の経験や学習の積み重ねによって形づくられたものだということ。飼い主がその背景を理解してあげることで、無理のないペースで改善に導くことが可能になります。

よくある行動パターンとその特徴

犬が吠えたときの対応
恐怖心
知らない犬に対して「怖い存在」と認識し、警戒して吠える。
縄張り意識
「ここは自分のテリトリーだ」と主張するために吠える。
興奮・喜び
遊びたくて気持ちが高ぶり、思わず吠えてしまう。
ストレス・不安
落ち着かない状況や緊張する環境で感情が高ぶり吠える。
逃げられない
リードなどで自由が利かず、距離を取れないため防衛的に吠える。

散歩中に近づくと吠えるケース

もっともよく見られるのが、「お散歩中に他の犬が近づいてきたときに吠える」という行動パターンです。

これは非常に多くの犬が示す行動で、飼い主にとっても「うちの子だけ?」と悩みやすい場面でもあります。犬にとって散歩は楽しい時間ですが、同時に自分のテリトリーを移動しているような感覚を持ちやすく、突然の接近は“侵入”や“脅威”と捉えられることがあるのです。

とくに、自分のペースでゆったり歩いているときに、視界の端や背後から他の犬が急に近づいてくると、驚きとともに本能的な警戒心が働き、吠えたり身構えたりするケースが多く見られます。

これは、犬同士の「距離感」がとても重要であることを意味しています。犬にはそれぞれ「これ以上近づいてほしくない」と感じるパーソナルスペースがあり、それを他の犬が無意識に越えてしまうと、不快感や恐怖、緊張が生まれます。

また、小型犬や神経質な性格の犬の場合は、体の大きな犬や動きの激しい犬に対して強い不安や恐れを感じやすく、結果として“吠える”という防衛反応を見せることが多くなります。この吠えは「攻撃」ではなく、「これ以上来ないで!」という自己防衛のためのアピールであることが多いのです。

さらに見落とされがちなのが、飼い主がリードをピンと張ってしまうことで、犬に緊張感を与えてしまうという点です。犬はリードを通じて飼い主の感情を敏感に感じ取ります。リードが強く引かれていたり、飼い主自身が焦った様子を見せていると、「やっぱり今の状況は危険なんだ」と犬が判断してしまい、より強く吠えることにつながるのです。

このように、犬が散歩中に他の犬に吠える背景には、犬の性格・体格差・過去の経験・飼い主の対応など、さまざまな要素が絡み合っていることを理解しておくことが大切です。反応を責めるのではなく、「なぜそうなっているのか?」を丁寧に読み解いていくことが、改善の第一歩になります。

リードを引くことで逆効果に

犬が他の犬に対して吠えたとき、とっさにリードをグッと強く引いてしまう飼い主さんは少なくありません。これは「止めさせたい」「相手の犬に迷惑をかけたくない」という思いからの行動であり、ごく自然な反応でもあります。

しかし、実はこのリードを引くという行為が、逆に吠え癖を悪化させてしまうことがあるのです。

犬は、私たちが思っている以上にリードを通じて飼い主の気持ちや身体の動きを敏感に感じ取る生き物です。吠えた直後に飼い主がリードを強く引いたり、焦って体の動きを大きくしたりすると、犬にとっては「やっぱり今の状況は危ないんだ」「飼い主も緊張してる。何かが起こるに違いない」と不安や緊張感を増幅させるきっかけになります。

さらに悪いことに、犬がそのような場面を繰り返し経験するうちに、「他の犬が近づいてくると自分がリードで嫌な感覚を受ける」「怖い思いをする」と学習してしまい、“他の犬=嫌なことが起こる”というネガティブな印象を強化してしまうのです。

これは、いわゆる「負の連鎖」の始まりです。

リードの引っ張りによる「負の連鎖」
① 他の犬が近づく
犬は少し警戒している状態
② 吠える
防衛本能または興奮による反応
③ 飼い主がリードを強く引く
不快な感覚+飼い主の緊張が伝わる
④ 犬が「他の犬=嫌なこと」と学習
次回も吠えやすくなる要因に
結果:吠える → リードを引く → 不快 → 吠える…の負のループに
対処法:
・リードを強く引かず、まず距離をとる
・静かにその場を離れる
・おやつや声かけで意識をそらす
・飼い主は落ち着いた態度で対応

「他の犬が近づく → 飼い主がリードを強く引く → 嫌な思いをする → 次に他の犬を見たときにさらに警戒して吠える」というサイクルができてしまうと、吠える行動が定着し、改善が難しくなってしまいます。

また、飼い主の無意識な緊張も問題となります。自分では気づいていなくても、「また吠えたらどうしよう」「あの犬は苦手そうだな」と不安に思いながら散歩していると、その緊張はリードを通じて確実に犬に伝わります。犬はそれを感じ取り、「飼い主が緊張している=やっぱりあの犬は危ない存在なんだ」と判断し、より強く反応してしまうようになります。

このように、リードの扱い方ひとつで、犬の感情や行動に大きな影響を与えてしまうことを理解し、まずは飼い主自身が冷静に、穏やかな姿勢で接することが大切です。

吠えたときは、リードを引く代わりに犬の意識をそらす、距離を取る、静かにその場を離れるなどの対応が望ましく、根気強く繰り返すことで徐々に吠え癖の改善へとつなげていくことができます。

吠え癖を改善するしつけ方法

無視・タイミングを意識した褒め方

犬が吠えたときの対応
❌ よくあるNG対応
犬が吠えた!
→ 飼い主が「ダメ!」と大声で叱る / 名前を呼ぶ
→ リードを強く引く
➡️
犬の学習:
「吠えたら飼い主が反応してくれる!」
→ 吠える行動が強化される
✅ 望ましい対応
犬が吠えた!
→ 飼い主は無視
(視線を外す・声をかけない・動かない)
➡️
犬が静かになる
その瞬間に褒める+ご褒美
→ 吠えない行動が強化される
POINT:
・ご褒美は「静かにしている時」に限定!
・叱るより「褒める」しつけが効果的
・焦らず、冷静な態度で根気強く!


他の犬に対して吠えてしまったとき、飼い主がどのように対応するかは、その後の犬の行動に大きく影響します。多くの飼い主さんが、「静かにさせなければ」「すぐに止めさせないと」と焦ってしまい、とっさに大きな声で名前を呼んだり、「ダメ!」と叱ったりしてしまうことがあります。しかし、実はこのような対応が逆効果になってしまうケースも少なくありません。

犬にとっては、「吠えた直後に飼い主が声をかけてくれた=注目してもらえた」と解釈することがあるのです。たとえそれが叱るような言葉だったとしても、“吠えることで飼い主が反応してくれる”という行動の強化につながってしまう恐れがあります。これは、特に飼い主との関係が強く、構ってほしいという欲求の強い犬に起こりやすい傾向です。

そのため、他の犬に吠えたときはすぐに反応せず、まずは無視することが基本となります。無視といっても、ただ黙っているだけではなく、犬に視線を向けない・身体をそらす・動きを止めるなど、明確に「その行動には反応しないよ」という態度を示すことが大切です。

そして、犬が自発的に吠えるのをやめたり、こちらに注目して静かにしている様子が見られたら、その瞬間を逃さず「お利口だね」「いい子だね」と優しい声で褒めてあげましょう。声のトーンは穏やかで、落ち着いた雰囲気で伝えるのがポイントです。

こうした「吠えない=褒められる」「静かにしている=良いことがある」という経験を繰り返し積み重ねることが、行動の改善につながるのです。

また、ご褒美のおやつや撫でるタイミングも非常に重要です。たとえば、犬が吠えている最中におやつを与えてしまうと、「吠えたらおやつがもらえる」と誤解してしまい、吠える行動が強化されることになります。

そのため、ご褒美を与えるのはあくまでも“静かにしているとき”に限定しましょう。たとえば、他の犬が通り過ぎたあとに吠えるのをやめて、飼い主の方を見たり、座って落ち着いているタイミングなどが最適です。撫でるときも、犬が興奮しているときではなく、落ち着いているときに静かに触れることを意識しましょう。

このように、吠えたことを叱るのではなく、吠えなかったとき・静かにしているときの行動を強化するという“正の強化”を中心としたしつけ方法を取り入れることで、犬自身が「どうすれば褒めてもらえるのか」「何が求められているのか」を理解しやすくなります。

焦らず、少しずつでも着実に「静かにすることの良さ」を教えていくことで、他の犬に対する吠え癖の改善へとつながっていきます。根気よく、愛情をもって向き合う姿勢が、なによりも大切です。

一定の距離を保ちながら慣れさせる

段階的に慣れさせるアプローチ
1
吠えずにいられる距離からスタート
他の犬が見えても吠えない位置で、安心できる場所から始めましょう。
2
吠えなかったら即褒める
優しく声をかけたり、おやつを与えて「良いことがある」と学ばせます。
3
少しずつ距離を縮める
吠えずにいられることが安定したら、10〜50cmずつ距離を詰めていきます。
4
吠えたら距離を戻す・中断
吠えてしまった場合は無理せず距離を取り、その日は終了してOKです。
5
「安心できる距離」が縮まる
繰り返すことで、他の犬に近づいても安心して吠えずにいられるように。
6
「吠えない成功体験」が自信に
静かにできたことを褒め続けることで、「怖くない」「大丈夫」が育ちます。

吠えの度合いが強い犬や、過去に他の犬とトラブルがあった犬に対しては、いきなり近距離で他犬と接触させるのは避けるべきです。無理に近づけようとすると、犬は強いストレスを感じ、「また嫌なことが起きる」「怖い」と学習してしまい、ますます吠えるようになってしまう可能性があります。

このようなケースでは、「段階的に慣れさせる」アプローチが効果的です。まずは、愛犬が落ち着いていられる距離――たとえば、他の犬が視界に入ってもまだ吠えずにいられる範囲――からスタートします。この「反応閾値」を超えない距離を見極めることがとても重要です。

最初の段階では、他の犬が見える公園の一角や広い散歩道の対岸など、物理的な距離と心理的な安全距離の両方を保てる場所を選びます。そして、他の犬が見えても吠えなかったときに、すかさず優しく声をかけたり、好物のおやつを与えたりして、「吠えなかったこと=良いことがある」というポジティブな経験を積ませていきましょう。

このときのご褒美は、犬がとても喜ぶ特別感のあるおやつや、おもちゃを使うのも効果的です。ご褒美の質を上げることで、「静かにする=得られる報酬の価値が高い」と犬が感じやすくなり、学習効果がより高まります。

距離を少しずつ縮めていくタイミングも、犬の様子をよく観察しながら慎重に行います。次の段階に進むときには、前回の距離で十分に落ち着いていられることを何度も確認し、安定してきたら10cm〜50cm単位で徐々に距離を近づけていきます。

また、もし途中で吠えてしまった場合は、すぐに距離を戻す・トレーニングを一旦中止するなど、犬がパニックにならないように配慮することも大切です。焦らず「一歩進んで半歩下がる」くらいのつもりで、じっくり時間をかけるのが成功への近道です。

このようにして、他の犬が近くにいても吠えずにいられる距離が少しずつ短くなっていく過程の中で、犬自身の「安心感」や「自信」が育っていきます。吠えずに過ごせたことを繰り返し褒められることで、「他の犬=怖くない」「自分は落ち着いていられるんだ」という認識が深まり、行動が安定していくのです。

とくに社会化が不十分だった犬や、過去のトラウマがある犬にとっては、こうした段階的な慣れのプロセスがとても重要です。強引に慣れさせようとするのではなく、犬の心の安全を最優先にしながら、少しずつ“吠えない経験”を積み重ねていくことが、信頼と安心に基づいたしつけの基本となります。

他の犬に慣れさせるには?

ドッグランやしつけ教室を活用

安全な環境で他の犬と触れ合う経験を積ませるには、ドッグランやしつけ教室の利用がとても有効です。

ドッグランでは、リードを外した状態で自由に動き回れるため、犬自身が他の犬との距離感を調整しながら接触することができます。これは、リードで制限される散歩時と比べて、犬にとってストレスが少なく、自然な社会性を身につけるうえでも効果的です。

ただし、いきなり犬の多い時間帯に連れて行くのではなく、まずは飼い主と一緒に見学をして周囲の雰囲気に慣れることからスタートするのがおすすめです。慣れてきたら、性格が穏やかで社交性のある犬とだけ短時間接するようにすると、恐怖心を抱かずにポジティブな経験を積みやすくなります。

また、専門のトレーナーが指導するしつけ教室では、犬同士のふれ合いだけでなく、飼い主がどのように対応すればよいかという具体的な方法も学べます。しつけ教室では段階的な社会化の機会が設けられており、同じような悩みを持つ飼い主同士の情報交換もできるなど、安心して取り組める環境が整っています。

特に、幼少期に社会化が不足していた犬にとっては、こうした場でのトレーニングが非常に重要です。他の犬と上手に接する経験を重ねることで、「犬は怖くない」「自分は落ち着いていられる」という自信を育むことができます。

飼い主と愛犬が一緒に成長していける環境を選ぶことで、無理なく、そして楽しく社会性を身につけることができるのです。

信頼関係を築いた上で段階的にトライ

最終的にもっとも大切なのは、「飼い主との信頼関係」です。
どんなトレーニングや環境づくりをしても、愛犬が「この人がそばにいてくれるから安心」と感じていなければ、不安や恐怖を完全に取り除くことはできません。

飼い主との信頼関係がしっかり築かれていれば、たとえ知らない場所や初めて会う犬がいても、「大丈夫、飼い主が守ってくれる」という気持ちが犬の心の支えになります。
その安心感が、新しい環境に対して前向きなチャレンジをする原動力になるのです。

また、焦らず段階的に慣れさせていくことも大切なポイントです。無理に接触させようとせず、愛犬のペースを尊重しながら、少しずつ距離を縮めていくようにしましょう。たとえば、「今日は他の犬が見えるところで落ち着いていられた」「少し近づいても吠えなかった」といった小さな成功体験を繰り返し積み重ねていくことが、犬にとっての自信や安心感に確実につながっていきます。

こうしたポジティブな経験を通して、犬は「吠えなくても大丈夫」「落ち着いていれば良いことがある」と学習し、他の犬に対しても穏やかに接することができるようになっていくのです。
時間をかけてじっくり向き合うことで、信頼と安心に満ちた関係が育まれます。

飼い主がやってはいけないNG対応

怒鳴る・罰を与えるのは逆効果

「ダメ!」と大声で怒鳴ったり、リードを勢いよく引っ張ったり、さらには叩く・押さえつけるといった体罰に近い対応をしてしまう飼い主さんもいますが、こうした方法はすべて逆効果です。
一見、厳しく叱れば「やめてくれるかも」と思ってしまいがちですが、実際にはその場しのぎにしかならないばかりか、愛犬との信頼関係を大きく損なう原因にもなります。

そもそも犬は、人間の言葉の意味を正確に理解しているわけではありません。「ダメ!」と怒鳴られても、「なぜ怒られているのか」が分からなければ、不安や混乱を覚えるだけです。
とくに他の犬が近づいたタイミングで怒鳴られたり、リードを強く引かれたりすると、「他の犬がいる=怖いことが起きる」と誤って学習してしまう恐れがあります。

その結果、他の犬を見ただけで警戒心を強め、以前よりも強く吠えるようになってしまう…という悪循環に陥ることも少なくありません。
愛犬が吠える背景には、「怖い」「不安」といった感情が潜んでいることが多いため、その気持ちを無視して力で抑えつけようとすると、逆に問題行動が深刻化してしまう可能性があるのです。

叱るよりも、安心させること。それが、吠え癖の改善に向けた本当の第一歩です。

自分が緊張してしまうのもNG

また、飼い主自身が緊張してしまうと、その気持ちは驚くほど敏感に犬へと伝わります。
「また吠えたらどうしよう」「周囲の人に迷惑をかけてしまうかも…」と不安になればなるほど、その緊張感がリードや声のトーン、動きの硬さなどを通して犬に伝わり、犬も自然と身構えてしまいます。

犬は言葉が通じない分、飼い主の表情や雰囲気、ちょっとした仕草にとても敏感です。特に、他の犬が近づいてくるシーンでは、「飼い主が緊張している=危険が迫っている」と誤解し、警戒心を強めて吠えたり威嚇したりする行動に出ることがあります。

ですので、飼い主側がリラックスした状態を保つことは、愛犬に安心感を与えるうえで非常に重要です。「落ち着いて行動する飼い主=信頼できる存在」という認識を持たせることが、問題行動の改善にもつながります。

散歩中などに吠えるシチュエーションが近づいてきたときこそ、深呼吸をして肩の力を抜き、ゆったりとした声で優しく声をかけたり、軽く撫でてあげたりと、冷静な対応を心がけましょう。
そのような姿勢が、犬に「大丈夫、怖くない」と思わせる土台を作り、信頼関係の構築にもつながっていきます。

まとめ:吠え癖は“理解と練習”で着実に改善できる!

犬が他の犬に吠えてしまうのには、必ず理由があります。
その行動の裏側には、恐怖や不安、過度な興奮、または社会化不足など、犬自身の抱える複雑な心理的背景が潜んでいます。 人間にとってはただの「吠える」という行為に見えるかもしれませんが、犬にとっては「どうしていいかわからない」「相手を追い払いたい」「自分を守りたい」という精一杯の意思表示であることがほとんどです。

こうした心理を正しく理解し、そのうえで犬に合った対応やトレーニング方法を取り入れていけば、時間はかかっても必ず行動の変化が見えてきます。 成果はすぐに現れないかもしれませんが、根気よく続けることが大切です。

まずは、無理をさせず、犬のペースに合わせて段階的に慣れさせていくこと。 そして、「今の反応はよかった!」という瞬間を逃さずにしっかり褒めること。
こうした積み重ねによって、犬は「こうすれば安心できる」「この行動で褒められる」と少しずつ学習していきます。

「吠える=悪い子」と決めつけるのではなく、「うまく伝える方法がわからないだけ」と考え、愛犬の不安や戸惑いに寄り添う気持ちを持つことが、しつけ成功の第一歩です。

吠え癖の改善は単なるトラブル解決ではなく、飼い主と愛犬の絆をより深く結び直すための貴重なプロセスでもあります。
焦らずに、一歩ずつ。「できたね」「今日もがんばったね」と声をかけながら、愛犬と共に歩むその時間こそが、何よりもかけがえのないものとなるでしょう。

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