ブラッシングでフケが増えるのは、単なる乾燥や季節要因だけとは限りません。シャンプーのしすぎや道具のミスマッチ、栄養バランスの乱れ、ノミ・ダニなどの皮膚トラブルが隠れていることも。
この記事では「正常と異常の見分け方」から、被毛タイプ別の正しいブラシ選び、力加減・頻度のコツ、保湿ケア・食事・室内環境の整え方、そして受診の目安までを体系的に解説。毎日のブラッシングを“スキンチェックの時間”に変えて、フケの悩みを今日から根本ケアしましょう。
最近ブラッシングすると白い粉が…乾燥だけかな?
ちょっとカサカサするかも。ブラシがチクチク痛い時もあるよ。
じゃあ道具を変えて、保湿ミストも使おう。ごはんも見直してみるね。
うん!やさしくとかしてくれたら、ぼくも気持ちよく続けられるよ。
1.犬のフケとは?正常と異常の見分け方

乾燥や新陳代謝による軽度のフケ
犬の皮膚も人と同じくターンオーバー(新陳代謝)で古い角質がはがれ落ちます。季節の変わり目や暖房の使用開始時、換毛期には、ブラッシングで白い粉状のフケがいつもより見えやすくなることがあります。これは生理的(正常)な範囲のことが多く、皮膚が赤くない・かゆがらない・被毛がツヤを保っているなら、過度に心配はいりません。
ただし、正常でも乾燥が強い環境(湿度が低い、シャンプー直後に保湿をしない等)では一時的に増えることがあります。環境とケアの見直しで改善するケースが多いので、まずは日常ケアから整えていきましょう。
皮膚病やストレスが原因の異常なフケ
一方、かゆみ・発赤・臭い・脱毛・べたつきを伴うフケは異常のサイン。脂漏性皮膚炎、外部寄生虫(ノミ・ダニ)、真菌(皮膚糸状菌=いわゆる白癬)、酵母(マラセチア)増殖、アレルギー、ホルモン疾患(甲状腺機能低下症など)でもフケは増えます。ストレスや睡眠不足、急な環境変化でも自律神経が乱れて皮脂分泌が不安定になり、フケが目立つことがあります。
見分けの目安は、「急に増えた」「広がる」「痒みや臭いを伴う」「赤みや湿疹がある」「ブラッシングで血がにじむほど掻く」。該当する場合は自己流ケアを続けず、早めに受診しましょう。
2.ブラッシングでフケが目立つ主な原因

乾燥肌やシャンプーのしすぎ
シャンプーの頻度が高すぎたり、人用シャンプーを使っていると皮脂の取りすぎで乾燥し、白い粉状のフケが出やすくなります。犬の皮膚は人より弱酸性〜中性寄りでバリアが薄く、過洗浄はすぐに乾燥・刺激へ。基本は犬用の低刺激シャンプーを選び、皮膚状態により2〜4週間に1回を目安に(獣医師指示があれば別)。シャンプー後の保湿(被毛・皮膚用コンディショナー/ミスト)もセットで行いましょう。
栄養バランスの偏り
被毛と皮膚の健康には必須脂肪酸(特にオメガ3:EPA/DHA)、亜鉛、ビオチン、ビタミンA・E・B群が欠かせません。手作り食やトッピングの比率が高い場合、栄養バランスが崩れて乾燥・脂漏・被毛のパサつきが出やすくなります。総合栄養食を基本に、必要に応じてオメガ3サプリなどを獣医師の助言のもとで活用しましょう。
ダニ・ノミなどの皮膚トラブル
外部寄生虫はかゆみ→掻く→皮膚バリア破壊→フケ増加の悪循環を招きます。特にツメダニ(ケイレティエラ)は「歩くフケ」と呼ばれるほどフケが増えることがあり、ノミは唾液によるアレルギー反応で強い痒みを引き起こすことが。通年での駆虫予防と、散歩後の被毛チェックが基本です。
3.正しいブラッシングのやり方

ブラシの種類と選び方(スリッカーブラシ/コーム等)
被毛タイプで道具は変わります。具体的には、短毛は皮脂を均一に伸ばせるブリストルブラシやラバーブラシ、ダブルコート(柴・コーギーなど)は抜け毛を絡め取るスリッカーブラシやアンダーコートレーキ、長毛(シーズー・マルチーズ等)は毛流れを整えるピンブラシ+仕上げ用コーム、カール・巻き毛(プードル系)はスリッカーで根元の絡みをほどいてからコームでチェック、という組み合わせが基本です。
さらに、肌が敏感な子は先丸ピンや柔らかいパッドのものを選ぶ、毛玉ができやすい部位(耳裏・脇・内股)は目の粗いコームから入る、換毛期は“取り過ぎ防止”のため短時間・小分けで使うなど、被毛の質・密度・肌の強さに合わせて道具と当て方を微調整しましょう。
- スリッカーブラシ:細いピンで絡みをほどく。ダブルコート・カール犬種の下毛除去に有効。皮膚に強く当てない。
- ピンブラシ:先丸ピンで表面を整える。長毛・中毛のデイリーケアに。
- コーム(粗目/細目):仕上げ・毛玉確認用。耳裏・脇・内股など毛玉ができやすい部位のチェックに。
- アンダーコートレーキ:換毛期の下毛を効率よく抜く。抜きすぎ注意。
- ブリストル(豚毛等):短毛にツヤ出し。皮脂を均一にのばす。
- ノミ取りコーム:寄生虫チェックに便利。
力加減と頻度の目安
“皮膚は紙一枚残すつもり”のソフトタッチが基本。スリッカーは手首を返さず、面で当ててスッと抜く。毛流れに沿って、地肌をえぐらないのがコツです。頻度は犬種と季節で差があり、短毛:週2〜3回/中・長毛:ほぼ毎日、換毛期は回数を増やして短時間を小分けに。1回を長くやるより、3〜5分を複数回の方が皮膚負担が少なく、フケを悪化させにくいです。
フケを悪化させないための注意点
- ドライ前の“ラインブラッシング”:毛を少しずつ分け、根元から順に。無理に一気に梳かさない。
- 乾いた毛への強摩擦NG:静電気で角質がはがれやすくなるため、ブラッシングミストでうるおいを与えてから。
- 入浴後の完全乾燥:湿りはマラセチア増殖の温床。根元までぬるめ風で乾かし、仕上げに冷風でキューティクルを整える。
- 人用製品を使わない:pHや成分設計が異なり、バリアを壊す可能性。必ず犬用を。
4.フケ対策に役立つケア方法

保湿系シャンプーやスプレーの活用
セラミド・ヒアルロン酸・尿素などの保湿成分を配合した犬用シャンプー/リンス/スプレーは、角質層に水分を抱え込ませて皮膚バリア(保湿・保護機能)を補います。ポイントは「洗う=落とす」「保湿=残す」のバランス。シャンプー頻度は安易に上げず、汚れが強い時だけ洗い、普段は保湿ミスト+ブラッシングで整えるのが基本です。ミストはブラッシング直前に被毛全体へ軽くスプレーして静電気を抑え、角質の剥がれを防ぎます。乾燥が強い日は湯シャン(ぬるま湯すすぎのみ)+保湿で“洗いすぎ”を回避。リンスは数分置いてからしっかりすすぐ→タオルドライ→低温ドライヤーで根元まで乾かすと、保湿効果が長持ちします。香料・アルコールが強い製品は刺激になり得るので、低刺激・犬用専用を選びましょう。
食事改善(オメガ3・ビタミン類)
皮膚と被毛は毎日の食事が原料です。まずは総合栄養食をベースに、必要に応じてオメガ3(EPA/DHA)をプラスすると、角質のうるおい維持や炎症のコントロールに役立つことがあります。併せて亜鉛・ビオチン・ビタミンA/E/B群が不足しないよう配慮しましょう。サプリを使う場合は過剰摂取や相互作用に注意し、体格や既往歴を踏まえて獣医師に相談してから。フードの切り替えは急に行うと消化不良や皮膚トラブルの引き金になるため、1〜2週間かけて少しずつ割合を変えるのが安全です。食物アレルギーの疑いがある場合は、原材料を絞った療法的フードや除去食試験を検討し、自己判断での頻繁な変更は避けましょう。
室内環境(加湿・換気)の見直し
フケ対策は室内環境の最適化が土台です。湿度40〜60%を目安に保ち、冬は加湿器+洗濯物の室内干しで乾燥を緩和、夏はエアコンで22〜25℃を目標に温度管理を。乾燥と汚れた空気が重なると静電気や刺激物質で角質がはがれやすくなります。1〜2時間に一度の換気や、空気清浄機・エアコンのフィルター定期清掃で微粒子を減らしましょう。寝床周りは直風を避け、直射日光をやわらげる配置に。ブラッシングスペースには滑りにくいマットを敷き、舞い上がるフケを軽く湿らせたペーパーで拭き取ると拡散を抑えられます。暖房器具は遠赤外線など乾燥しにくいタイプを選ぶと、皮膚への負担が少なく済みます。
5.受診を検討すべきケース

フケと同時に脱毛・かゆみがある
掻き壊しによる二次感染(細菌・酵母)や、寄生虫(ノミ・ツメダニ・ヒゼンダニ)、真菌(皮膚糸状菌)が関与している可能性があります。部分的に始まった脱毛が数日〜数週間で広がる、または左右対称に薄くなる場合は、ホルモン疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群)など全身性の原因も視野に入ります。
自宅では、掻き壊しを悪化させないようエリザベスカラーや着せるタイプの保護ウェアで皮膚を守り、爪を短く整えて出血や感染を防ぎましょう。人用の軟膏やステロイドを独断で使うのは禁物です。
受診時は、発生部位の写真(初日→数日後の比較)を見せると経過が伝わりやすく、病院では皮膚のテープ検査・掻爬(スクレーピング)・ウッド灯検査・真菌培養、必要に応じて血液検査や甲状腺ホルモン測定が行われます。
皮膚が赤い、ただれている
赤み・湿疹・滲出液・強い体臭は炎症や感染が進んでいるサインです。マラセチアやブドウ球菌などが増えると、ベタつき+フケが同時に出やすく、かゆみで眠れないこともあります。自宅ケアでは悪化しやすいため、アルコール消毒・強い洗浄・アロマオイルなどの民間的対処は避けてください。
受診までの間は、ぬるま湯でやさしく汚れを落としてしっかり乾燥、こすらず押さえる程度に。熱感が強い部位は冷たい濡れタオルで短時間の冷却が有効なことも(長時間の冷やしすぎは不可)。病院では細胞診(塗抹検査)・培養感受性検査で菌種や薬剤選択を判断し、薬用シャンプー・外用薬・内服を組み合わせて治療します。自己判断の薬浴は症状を拡げることがあるため控えましょう。
短期間で急に悪化した
数日でフケが急増、全身に拡大、発熱・元気消失・食欲低下、あるいは粘稠なフケ(鱗屑)がボロボロ落ちるといった場合は、至急受診が目安です。誤食・薬剤反応・重度の感染症・自己免疫性皮膚疾患など、迅速な対応が必要なケースが含まれます。特に子犬・高齢犬・基礎疾患ありは悪化が速い傾向があるため要注意。
病院では全身状態を評価し、血液検査・皮膚検査・寄生虫検査のほか、状況によりアレルギー評価や食事試験が提案されることもあります。治療は原因に応じて抗菌・抗真菌・抗炎症(必要最小限)・保湿再建を段階的に行います。
※受診時に持っていくと役立つ情報
- 使用中のシャンプー/保湿剤/サプリ/薬の名前(写真でも可)
- 食事内容(銘柄・トッピング・おやつ)と変更歴
- 発症時期・悪化タイミング(季節・暖房開始・シャンプー後など)
- 生活環境の変化(引っ越し・新しいペット・寝具変更)
- 写真・短い動画(初期・現在の比較や掻く様子)
こうしたメモがあると原因推定と治療選択がスムーズになり、回復までの近道になります。
6.まとめ:ブラッシングは健康チェックのチャンス。フケ対策は日常ケアから

ブラッシングで見えるフケは、身体からの“小さなサイン”です。乾燥や季節要因なら、正しい道具選び・力加減・保湿・環境調整で改善が期待できます。一方、かゆみ・赤み・臭い・急な悪化を伴うなら皮膚病や全身疾患の可能性も。
毎日のケアを「整える→観察する→必要なら受診する」の流れにし、ブラッシングを“スキンチェックの時間”へ進化させましょう。無理なく続けられる習慣が、被毛のツヤだけでなく、犬の心地よさと健康寿命を支えてくれます。
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